SPECIAL TALK

企画の番です 〜発案・キャスティング秘話〜

秋元
もともと『あなたの番です』の発想のきっかけは、昔住んでいたマンションの住民会に出席した時の経験です。普段プライベートのことは何も分からない人たちが集まっている状況が非常に面白かったので、そんな住民会で大人数での交換殺人が始まったらどうだろう?というところからスタートしました。
福原
すごく面白い企画だなと思ったんですが、だからこそ、その面白さをどう活かしたらいいのか考え始めたら行き詰まってしまって、ずっと住人の相関図とにらめっこしてたら夢にも出てきました(笑)
鈴間
日テレの会議室でもその表を書いて打ち合わせをしていたんですが、ガラス張りの部屋でホワイトボードを消し忘れて帰ってしまって。OA前だから誰も内容は気づいてなかったですが、食堂のある17階でしばらくネタバレが晒されてました(笑)。でも、あの表を作るのだけで3カ月くらい掛かったと思いますね。
秋元
キャラクターに関してはもう脚本の福原くんの力ですよね。
福原
秋元さんがすごく面白い外枠を作ってくれていて、最終的な魂は役者さんが入れてくれるとは思っていたので、橋渡しをするような気持ちでした。でも登場人物も多いので、パズルみたいと言いますか、国語よりも数学やってる感じで。
秋元
主人公は最初、同じような年齢の夫婦を考えていたんですが、どこかちょっと変わっているほうが面白い。そこで原田知世さんと田中圭くんとなって、作っていくうちにある種のバカップルというか、年上の奥さんである菜奈ちゃんにベタ惚れの翔太っていうキャラクターや関係性も出来ていったんですよね。
鈴間
最初から菜奈ちゃんが10話で殺されてしまうというのは決めていたので、愛が強いふたりがいいねっていうのがありました。

タイトルの番です 〜“あな番”ブームの火付け秘話〜

鈴間
タイトルについては、情報解禁の直前まで違うタイトルだったんですよね。モニター調査があって、いくつか選択肢を秋元先生に出していただいて意見を訊いてみたら、『さぁ、あなたの番です』が断トツで1位だったんです。そこから『さぁ』は取って、みんなが観たくなるタイトルということで決定しました。
秋元
企画書の段階では、鈴間は仮題で『ドミノ』と付けていたんです。
福原
確か『誰かが誰かに殺される』っていうタイトルも候補にありましたよね。でも、略すと『誰誰』になっちゃうじゃないですか。
『あな番』で良かったなって(笑)。
鈴間
略称もSNSのハッシュタグでは“#あな番”とは付けていたんですが、そもそもドラマがそんなに話題になってないときはネットニュースの見出しでも使ってくれないくらいマイナーで。それが浸透して、考察ブームまで起こったのはものすごく意外でした。
秋元
やっぱり一番は鈴間の力で、うまくネットで話題にできるようにしたというのは大きいと思いますね。そこから考察ブームになったと思うんですが、これは来るなぁと思ったのは、テレビ東京のディレクターのお母さんが『あな番』のマンション(=キウンクエ蔵前)の模型を作って研究していると知った時だよね(笑)。
鈴間
Twitterで立体模型の写真をあげて、母親が犯人を推理するために作ったってつぶやかれていて(笑)。
しかもそれが第1話の放送直後だったんです。嬉しかったですね。
福原
僕は放送が始まってからもずっと執筆に追われていて、世の中がどうなっているのかさっぱり分からないまま書いてました(笑)。
秋元
あんまり分かってないよね(笑)。たぶん福原くん以外は、鈴間も僕も原田知世さんも田中圭さんも「犯人は誰なんですか?」ってずっと聞かれていたと思います。僕はスポーツジムに行ってもレストランに行っても聞かれて、全然デタラメなことを言ってました(笑)。
福原
今思い出したんですが、別現場の打ち合わせで「実は僕、犯人聞いちゃったんですよぉ」とか言われて驚いて。でも全然違う役を指して、「○○が黒幕なんでしょぉ?」とか言うので、「それ、誰に聞いたんですか?」って聞いたら、「秋元さん」って(笑)。

反響の番です 〜ドラマ放送後の話題沸騰秘話〜

鈴間
みんなで考えようと言わずに始まったんですが、YouTuberさんやTwitterの考察班と呼ばれる方たちがいろいろ考察してくださって、私たちとしてももっとサービスして楽しんでもらいたいというのはありましたね。“AI菜奈ちゃん”(ドラマ内で二階堂忍が開発して手塚翔太に渡すアプリ)も実際に菜奈ちゃんと会話ができたらいいなっていう気持ちに皆さんがなってくださっているなら、頑張って作ってみようとなって(LINEの友だちとして再現されて、登録数134万人、総会話数2億9000万回を記録)。
秋元
視聴者の方たちは何を見ているのかという勉強にすごくなりました。例えば、黒島(沙和)ちゃん双子説というのがあって、それはバッグの掛け方の違いから言われていたんですが、そういうところを見てるんだって。あと犯人の「ゾウさんですか?キリンさんですか?」というセリフを、回転数を変えて誰の声なのか探ろうとした方もいて。逆にその分、我々も大変で、あとから管理人室の鍵穴を作るのを忘れていたことに気づいたりもして(笑)。視聴者の皆さんの興味や、面白がり方はすごいなと思いました。

映画化の番です 〜企画・脚本秘話〜

鈴間
映画化も本当に皆さんが面白がってくれたからこそですよね。
秋元
一番の問題は登場人物が死んでいる、犯人がもう決まっているというところで、それをどうするのか。そこが解決しない限りは、エピソード0を作るしかないですからね。
鈴間
菜奈ちゃんがいなければできないなというのがあって、初期段階で先生は「パラレルワールドかな」とおっしゃっていたんですよね。それならありえるって思ったんですが、具体的にどうするかは時間が掛かりました。
秋元
ずっと引っかかっていたものとパラレルワールドが結びついたんですが、その引っかかっていたものが交換殺人の条件だったんです。同じマンションに住んでる人たちで実行したら、知人だから交換殺人も何もないだろうっていう。それをどこかで言わせたいというのはあったんですよね。翔太がジャンケンに負けて住民会へ行って、話を持ち掛けられたときに「交換殺人にならないですよ」ってあっさり言ったら面白いな、と。そのあと、翔太と菜奈ちゃんの結婚式を挙げようということで、僕と鈴間が豪華客船と言ったところから福原くんはすごく大変になったと思います(笑)。
福原
いや、書いているときは楽しかったですね。5時間分くらいのアイデアをいただいたので、楽しい取捨選択の作業でした。
秋元
だいたい僕が殺され方のアイデア担当なんですよね(笑)。もともと僕はホラー映画やサスペンス、ミステリーが好きなんですが、その基本ってやっぱりサービス精神だと思うんですよね。お化け屋敷に入っていくかのように、どこで殺されたらドキッとするとか、どうやって出てきたらハッとするとか、そういうことを話しながらやってましたね。
福原
真面目なノリの打ち合わせなので、“なるほど”ってメモるんですが、普通に一人の客として“すごい! 面白い!!”と思っていて(笑)。ただ、これを具体的にどう落とし込めばいいんだろう、と。打ち合わせでは大変なことには気づかないふりして、今楽しいって思ったことを大切にしようといつも家に帰ってました(笑)。
秋元
福原くんは笑いが好きなんですよね。視聴者や観客の皆さんより前に、まず鈴間と僕を笑わそうとしている(笑)。劇場版もそうでしたが、脚本を読みながら大笑いしました。書いてるときはもうハイになってるんだと思います。どう考えてもこれカットするだろうっていうような長い笑いの部分があったりするんですが、それがすごく面白かったです。
福原
“役者さんが何かしてくれる”っていう信頼があるので、ちょっとした武器を渡すというか、こういうト書きを書いておけばこちらの想像以上に膨らませてくれるだろうなというのがあるんですよね。試写を観て、家に帰って台本を見直しました。“あのシーンって何だっけ? 誰が書いたんだっけ!?”と思って(笑)。そういう楽しみはありますね。役者さんが拡声器になってくれるっていう。そのための種を蒔いてるくらいの感じですかね。
鈴間
福原さんのラブレターが如き言葉たちを役者の皆さんがちゃんと受け取って、どうやってより面白くしようかと延長線上ですごく育てるみたいな感じかなと思います。
秋元
今回の劇場版はそれぞれのキャラクターのファンの皆さんに楽しんでいただける面白さや、犯人探しのミステリーの面白さももちろんありますが、あくまで僕の中での一番の見どころはラブストーリーなんです。福原くんは、こんなにラブストーリーを書ける人なんだ、と。本当にいいラブストーリーになっていて、胸がキュンとするようなセリフもあるので、ぜひそこは注目して欲しいなと思います。